二人のさびしい男がいた

『ちくま日本文学 006 寺山修司』に、野球について書いてあった。ぼくは野球には興味を持ったことがないけれど、ちょっとおもしろいと思った部分があったので、下に引っ張る。

 

「二人のさびしい男がいた。

これが、ピッチャーとキャッチャーだ。二人は唖でものが言えなかったので仕方なしにボールで相手の気持をたしかめあったのだ。二人の気持がしっくりいったときには、ボールは真直ぐにとどいた。しかし、二人の気持がちぐはぐなときにはボールはわきに逸れた。そして二人はいつでも、このボールの会話をかわすことをたのしみにしていたのだ。

ところが、この二人組に嫉妬する男があらわれた。彼は、何とかして二人の関係をこわしてやりたいと思った。

そこでバットという名の棍棒を持って二人のそばに寄って来て、いきなりボールを二人の外へはじきとばしてしまったのだ。バッターの役割というのは、まあ、そんなところだね」(『時代の射手』)

 

示唆に富んでいる。