ミンコフスキーの患者

以下に挙げるミンコフスキーの患者は、まさにぼくが普段感じているのと同じことを語っているので、載せておく。

 

「私の周囲にあるものはすべて不動である。物は皆それぞれに離れていて、私の心を動かさない。当然懐かしい追憶を呼び起し、数々の思いの機縁となる筈の物を見ても、私には何の感興も起って来ない。私はそれを理解することは出来るが、体験することが出来ない。人々は私の周りで無言劇を演じているようだ。しかも私はその外に在って、それに参加していない。私に判断力はあるが、生命の本能がない。私はもはや活発に活動することが出来ない。普通の人のように低音調から高音調に移って行くことが出来ない。私はあらゆるものと接触を失ってしまった。価値の観念、困難という観念が消失した。私と外界の間には、流れが途絶えてしまった。私はもう外界の中に入って身を任すことが出来ない。絶対的固定が私を取巻いている。私にとっては現在も過去も動かないが、未来は尚更動かない。私の中には一種の慣例(ルーチン)があって、未来を見ることは許されない。私は全く創造の力を失ってしまった。私の見る未来は、ただ過去の繰り返しに過ぎない。」(ミンコフスキー『精神分裂病』)

 

「理智だけはまだ正常だが、その他は全くの乱脈状態にある。私は現実性をすべて失ってしまった。私には感情がない。私は身体として存在しているだけで、生命の内的感覚を持たない。私はもはや事物を感じない。私にはもう正常の感覚がない。この感覚の欠如を私は理智によって補っている。」(ミンコフスキー『精神分裂病』)