日記、本と音楽

統合失調症。普段の生活について書きます。

2014年12月20日(土) 23時13分21秒

人間性の深奥に肉薄する芸術を生み出すためには、統合失調症的世界に一歩足を踏み入れねばならないが、本格的に統合失調症を発症した場合、その人は永久に人間性から隔離される。この矛盾。しかし、人間性の本質が、人間性を失いつつある人にしか看取せられないことは、おかしなことではない。なにかを深く認識するためには、そのなにかを失いつつあらねばならないからだ。感情を伝えることを志向する者は、感情において少なからず病を抱えていなければならない。自明性の安寧にまどろむことなく、自明性への疑いを提起するためには、少なからず自明性の喪失的事態に置かれていなければならない。

芸術家とは、一つには人間の感情を表現するものであり(それは「人間の」感情である。人間とはなにか、ということが問題である)、一つには自明性への疑いを提起し、現実への惰性的日常的親和的認知に異議を申し立てる(デペイズマン)ものであろう。受け取り手は感情を揺さぶられ、共感し、かつ人間が生きていることはなにか、ということを直接無媒介的に体験し、非日常を体験し、現実にたいする認知を見直すきっかけを得ることになるだろう。これこそが、芸術体験だと思う。たいせつなのは、another aspect of reality である。