2014年07月30日(水) 20時13分07秒

久し振りにニーナ・シモンの『ニーナとピアノ+4』を聴いているけど、改めて、The Desperate Ones は、Music For Lovers のための序曲だと思った。Desperate は、オリジナル盤の最後の曲なので、Music For Lovers の序曲として想定されてはいなかったはずなんだけど、ボーナストラック4曲の入っているバージョンを聴いていると、このバージョンこそ、この『ニーナとピアノ』のあるべきかたちなんじゃないかと思える。

 

このアルバムのハイライトは、ボーナストラック4曲にあると思っている。普通は、ボーナストラックは、オリジナルアルバムの持つ構成を破壊する危険を持っているんだけど、このアルバムに関して言えば、ボーナストラックが入ることで、アルバム全体が、より完全なかたちになっているように思う。きわめて例外的。このアルバムに、ボーナストラック4曲を追加することを企画した人は、このことをよくわかっていたんだろうな。

 

というわけで、ニーナ・シモンの代表作である『ニーナとピアノ』をこれから聴こうと思っている人には、ボーナストラック4曲の入っているバージョンを手にすることを勧める。

 

また、今回久し振りにニーナ・シモンを聴いていて思ったのは、音楽は、人間性の、あるいはその人の生活の一片を垣間見させるものだということ。音楽そのものが偉大であるというよりも、おそらく、その人の生活が、人間性が偉大なのだ。ニーナ・シモンを聴いていると、そう思う。

 

もちろん、ニーナ・シモンのピアノや歌の技術は、きわめて高い水準にあるんだけど、技術を感じさせない音楽なんだ。

 

ファーストアルバム収録の、You'll Never Walk Alone を聴いている。ピアノの独奏だけど、この演奏が一枚目のアルバムに収録されているということが、驚きだ。もうすべてを語っているように感じられるし、じっさい、ニーナは一枚目のアルバムのこの曲において、ある意味では、すべてを語っていたのだと思う。

 

上に、ニーナのピアノと歌の技術について、「きわめて高い水準にある」と書いたけど、技術と内容を切り離して考えることは難しく、そういう意味では、ニーナよりも高い水準にある歌い手や、ピアニストは、世界に何人もいないのではないかと、ぼくは思うな。たとえば、You'll Never Walk Alone という曲や、For All We Know という曲を演奏する、歌うにあたって、誰がニーナ・シモンを超えられるか?

 

ニーナのこれらの曲での演奏、歌唱は、ニーナの人間性そのものだ、おそらく。ぼくはそう思う。

 

詩的な演奏とは、この二曲での演奏のようなものをいうのだろう。音楽における詩とはなにか?それは、音の鳴っていない沈黙にある。沈黙が歌うこと、音楽による詩的表現というものは、そういうものだろう。「音楽」の鳴っていない沈黙を、いかに豊かならしめることができるかどうか。ニーナの音楽を聴き、ぼくは音楽を聴いているのか、音楽でないものを垣間見ているだけなのかどうか、見わけることができない。音楽など、たいそうありがたいものではない。それだからこそ、音楽は尊いのだ。