引用された身ぶり、自発的なもの

テレビの連続ドラマのヒロインそっくりの笑い方をする下宿のおばさん。あなたの『笑い』は引用された身ぶりなのでしょうか、それとも自発的なものなのでしょうか? あるいは、自分の生理までも、何者かの感化によって複製化されてしまったことにさえ、気がつかずにいる、ということなのでしょうか?(『ちくま日本文学 006 寺山修司』、p171)

 

自発的なもの、というのは、ミンコフスキーの「現実との生ける接触」なしには、ありえない。ぼくはいま、デイケアで、引用された身ぶりとしての笑いなどを、意図的に見につけているのだと言える。おそらく、デイケアに通っている人の大半は、「自分の生理までも、何者かの感化によって複製化されてしまったことにさえ、気がつかずにいる」人たちだと思う。統合失調症のような病気の人は、薬物療法を受けなければならないのだから、上にあるような「自発的なもの」を問題にすることはできないだろう。上の引用は、精神病理学的な問いをふくんでいると思う。木村敏の本にそのまま書いてあっても、不自然でないくらい。