『ゲッツ・ジルベルト』の思い出

『ゲッツ・ジルベルト』を聴いているけれど、これはぼくがいちばん好きなジャズのアルバムかもしれん。高校三年のころに出会い、それ以来ずっと聴いている。スタン・ゲッツのソロはどの曲もだいたい口ずさめる。ジャズというより、正確にはジャズ・サンバとか、ボサノバとかいうんだろうけど。これを超えるジャズのアルバムに出会っているだろうか。超えるアルバムはなさそうだけど、並びそうなアルバムならいくつかあるかもしれない。たとえば、チック・コリアの『カモメ』。でも、これら二つのアルバムは、音楽の内容的にあまりにも違うので(ラテン音楽という共通点はあるけど)、比較はできないかな。『ゲッツ・ジルベルト』は、高校のころから、ずっとCDで繰り返し聴いてきた。『カモメ』は、大学に入ってから、レコードで真剣に聴いた。繰り返し聴いたわけではないけど、かなり真剣に聴いたので、『カモメ』体験は、かなり印象に残っている。「ラ・フィエスタ」にしたところで、23分あるので、軽い気持ちでは聴けなかったし。でも、あれは一つの、本当の感動だったのではないかと思う。(一つの、と書いたのは、感動にはいろんな種類のものがあると思うから。)

 

それにしても、『ゲッツ・ジルベルト』において、スタン・ゲッツのソロはもともと用意したメロディを吹いているんじゃないかと訝しくなるくらいに、覚えやすく、親しみやすいメロディを吹いている。もちろん、即興で演奏していることは疑いようがない。高校三年のころ、これを聴いていて、ジャズのアドリブってのは、覚えにくいメロディばかりだったので、これ、本当に即興かいな、と思った。いまだに、即興でこれだけ覚えやすく親しみやすいメロディを演奏している例には出会ったことがない。ジャズをそんなに深く聴いていないだけかもしれないけど。デイブ・ブルーベックの『デイブ・ディグス・ディズニー』なんてのも、相当覚えやすいメロディを演奏しているな。